ボクの母さん 執着心

ボクの母さんが凄い所は 何に措いてもやりたい事を貫き通す精

神だ

飯を作る事も洗濯も掃除も日に日に疎かにしても自分がやりたい

事だけは成し遂げようとする

信販売の類が大好きで密かに購入していた

使いかけの商品や中には未開封のまま買ったことすら忘れている

物もある それらはどんどん範囲を広げていくゴミ部屋の中に埋

もれて母さんは家族に見つからないようにこっそり隠していた

そしてM教の布教活動も日に日に勢いを増していく

更に凄いなと思う所は 周囲が嫌がり何度断るも執拗に異常な程 

M教を押し付ける行為だ 

ノートやチラシの裏に母さんが聖書の一部を書き記したもの 

それと一緒にM教の冊子を添え配布するのだ

オヤジの部屋にもそれを置き続けた それが又喧嘩になり殴られ

る要因になると判っていても母さんはめげずにオヤジの布団の下

などに忍ばせて置く

そんな作業を数年間 母さんはボクが家を出るまで続けていた

案の定最初はその行為に対し怒鳴り散らしていたオヤジも途中か

らは怒鳴る回数が減り 母さんがオヤジの部屋の至る所に忍ばせ

て置いていたM教関連の物をオヤジが見つけるとビリビリに破い

ていた そしてそれをゴミが積みあげられた母さんの部屋や台所

に投げ捨て返していた 

 

祖父母も最初は「やめなさい」と言っていたが 一人娘という可

愛さからなのか はたまた彼女の執念に折れたのかは解らないが

ボクが家を出る頃には

「やりたいならあんただけやりなさい私たちは まんまんさん(仏

教)だからやらないのよ!!!」

と母さんが手渡ししてくるM教の冊子を返しながらそう言ってい

た祖父母の姿を何度も目にした

祖母はお経も習っていて ボクは小さい頃からよくお寺の法事や

葬式に連れて行ってもらったりした

又、祖父母のリビングに置いてあった仏壇の参り方等をいつも教

えてくれていた 

祖父母がする仏教は母さんのような異常なのめり込み方ではない

一般的にみかけるごく普通の信仰心だった


ボクの知る限り親戚も母さんがすすめるM教に賛同する者は一人

もいなかった  

オヤジの父が亡くなった時 母さんは葬儀に参列しなかった

母さんにとっては義理の父だ

母さんは葬儀が終るとひょっこり顔を出し「炊事を手伝いましょ

うか」と声をかけていたが「もうする事はないからゆっくりして

ていいわよ」と叔母さんから言われていた

すると今度は集まった親戚達にこっそり声をかけはじめていた

M教の話をし始め やはり冊子や書き記したメモを渡す行為をし

ていたのをボクは見てしまった

だけど親戚も やめてと口にするだけで母さんのあの執着心を止

めれる者はいなかった

 

ボクがまだ義務教育を受けていた頃 友達ではない同級生に

「お前の家の人うちに来たよ」と言われ嫌な思いをした事もある

 

母さんの執着心は凄いというか 怖い という表現の方がボクに

はしっくりくる様な気がする